朝6時、冷たい空気から秋の記憶を感じた。
11/10(木)
俺は肌に過去のメモリーを保存している。
毎年秋から冬に変わるこの時期になると二十歳、髪の毛を5㎜にして
いたことのない所で、見たことのない人と、やったことのない事を
していたその記憶をしつこく心に浮かばせる。
朝6時「起床!全員練兵場に6時5分までに集合!」という放送と同時に訓練教官が
生活館に突撃して来た。水を飲む暇も、トイレに行く時間もなく隣りの人を
起こした。
この300人の中、誰一人でも5分より遅かったら連帯責任でみんなが同じ罰を
受けるので(大体腕立て)6時5分までにみんなちゃんとした格好で集合するなんて
大昔に諦めていたが、その主役が俺になってはいけなかったので急いで練兵場に走っていた。
6時4分。どうせ怒られるだろうと思いながらも「急いで!」と慌てて飛び出てくる
奴らに叫びながら、俺は列の一番先に立っていた。(一番早くてではなく訓練の為に付与された番号の位置があった。)
その時俺はこう思った。「やっと地獄での一日が過ぎて、また地獄でのの一日が始まった。」と。その時の空気。その冷静で、肌に冷たくまつわってくる気持ち悪い記憶を抱いた秋の暁の空気を俺は今朝6時に感じた。その青い記憶の輪郭をまたいで俺は静かに朝ご飯を作った。